REGENERATIVE MEDICINE / HEART FAILURE

iPS心筋細胞シート「リハート」
保険収載後初の移植を実施

2026年9月29日、大阪けいさつ病院が重症心不全患者への移植手術を実施。これは「世界初のiPS心臓手術」ではなく、条件・期限付き承認と保険収載を経た製品の初回実施です。

大阪けいさつ病院リハート他家iPS細胞条件・期限付き承認更新 2026.09.30

何が新しいのか

大阪けいさつ病院は2026年9月29日、虚血性心筋症による重症心不全患者に、ヒト(同種)iPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」を移植したと発表しました。同日12時頃に手術が終了し、病院は「保険収載後、はじめての実施」と説明しています。

重要なのは、これを「世界初のiPS心臓手術」と呼ばないことです。大阪大学の医師主導治験では2020年1月に第1例目の移植が行われ、その後も臨床試験が進められました。今回の新しさは、2026年3月の条件及び期限付製造販売承認、9月1日の保険収載を経て、診療として実施された最初の症例である点です。

対象は標準治療で効果不十分な患者

承認された対象は、薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な、虚血性心筋症による重症心不全です。誰にでも使える一般的な心不全治療ではなく、関連学会の適正使用指針に従い、重症心不全と開胸手術の経験を持つ医療チームが慎重に患者を選定します。

治療の仕組み

他人由来のiPS細胞から心筋細胞を作り、シート状にした製品3枚を心臓表面へ順次移植します。製品資料では左側開胸手術を基本とし、移植翌日から3種類の免疫抑制剤を漸減期間を含め90日間使用します。細胞を心筋内へ注射する方法とは異なりますが、開胸手術を伴う侵襲的治療です。

承認前の根拠は8例

条件・期限付き承認の根拠となった臨床試験は8例です。主要評価では、移植26週後に左室駆出率(LVEF)がベースラインから5ポイント以上改善した症例は2/8例でした。厚生労働省資料では、52週時点でPeak VO2が10%以上増加した症例が4例あったことなどを踏まえ、有効性を「推定」できると判断しています。

証拠の読み方:8例の単群試験であり、正式な有効性確立とは異なります。「手術が順調に終了した」は周術期の事実で、長期の心機能改善や生存利益が確認されたという意味ではありません。

今後は75例の全例調査

製造販売後は、移植された全患者を対象とする使用成績調査が行われます。目標75例、20施設で、52週時点のPeak VO2とLVESVIを主要評価し、心不全入院、生存、6分間歩行、NYHA分類、LVEFなども追跡します。条件・期限付き承認の期限は7年で、その間に安全性と有効性を改めて検証し、本承認に向けた再申請が必要です。

患者・家族が確認すべきこと

  • 虚血性心筋症による重症心不全か
  • 標準治療が十分に行われても効果不十分か
  • 開胸手術と免疫抑制療法のリスクを理解しているか
  • 実施施設、適正使用基準、長期フォロー体制を確認したか

FAQ

Q. iPS細胞で心臓が完全に再生しますか?

そのように断定できる段階ではありません。承認は有効性が推定された条件・期限付き承認で、今後の市販後調査が重要です。

Q. 今回の患者の長期結果は分かりますか?

9月29日の病院発表は手術終了までの情報です。長期成績は今後のフォローアップと正式な公表を待つ必要があります。

Q. 海外患者も受けられますか?

適応、実施施設、保険資格、紹介経路など複数条件があります。現時点で海外患者向け一般受付を示す発表ではありません。

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